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今月は追っかけてる漫画の新刊が割とたくさん出た月だった。なぜか波があるよね。
「トップをねらえ2!&トップをねらえ!合体劇場版!!」試写会
ちょっとお呼ばれして行って参りました。
「トップをねらえ!」「トップをねらえ2!」計12話を約3時間にまとめた再編集版。3時間は集中力を維持するのがキツいだろーなーと思ってたけど、終始テンションが高かったのでそうでもなかった。
1は1〜4話を豪快に圧縮してその分5・6話をみっちり見せる構成。
「トップをねらえ!」って作品は、最初はいかにも80年代的な雰囲気の中から出発して、最終的にとんでもなく本気で壮大なSFに到達してしまうっていうそのギャップが高揚感を生み出していたところがけっこうあって。だからいま1本の映画として一息に見てしまうとどうなんだろうっていう心配が最初はあったんだけど、でも最終話のあのパワーはそういう時代性だとかノスタルジーとか抜きでもやっぱりスゴいなあと、あらためて思った。想像以上に。
2の方は実はまだぜんぜん見てなくて(ごめん)今日が初見だった。
ちらちらと情報を見る限りでは「これのどこがいったいトップなんだ?」とか正直思ってたんだけど、驚くほどトップでしたよ。
確かに作品世界の雰囲気とかはぜんぜん違うのだけど(前作から遥か遠い未来の話なので)、前作のエッセンスを「お姉さま」「バスターマシン」「時の流れ」という三題噺のレベルまで抽象化したうえでうまく継承していると思う。
でもそのうえで、やっぱりこれはオリジナルな作品だ。
特に「時の流れ」っていうネタの扱いが、前作とはまったく違う形の切なさを生み出していて面白かった。
1は絶対的な距離と時間によって引き裂かれる者たちの物語だったわけだけど、2はなんていうかもっと個人的なレベルの話だ。
子供の世界と大人の世界の間には、目には見えない距離がある。
それは特にその狭間にいる者にとっては、ほとんど死に等しいほどの絶望的な距離で。
でもその先にも確かに世界は続いているし、強い絆はその距離をも超えて繋がっていける。
そういう話なのかなと思った。
ノリコやカズミたちの生きてきた世界とノノやラルクが生きてきた世界がまったく異なるように、トップ1とトップ2はまったく別のリアリティをもった作品だ。
でもそれが2のラストで見事に繋がってしまう。
瞬く間に過ぎていく人の生と、悠久に続く宇宙の時の流れ。
時とともに変わりゆくものと、それでもなお変わらないもの。
ああ、これがSFというものなのだなあ。
というわけで、「トップをねらえ2!&トップをねらえ!合体劇場版!!」10/1より公開だそうです。
詳しくはこちら。
http://www.gainax.co.jp/anime/top_movie/index.html
『レディ・ウェポン』
『スウォーズマン』のチン・シウトン監督作品。この監督、ツィ・ハークに言わせると「女性アクションにしか興味がない」そうで、その言葉がものすごく納得できる内容になっております。ぶっちゃけ『チャーリーズ・エンジェル』に『ニキータ』と『地獄の女囚コマンドー』を足して何にも割らなかった感じのバカ映画。
物語は、高級コールガール風の女が白いポルシェでリゾートホテルにやってくるところからはじまる。彼女は部屋で待ってたマフィアのボスとオーイエーカマンカマンベイビーなシーンを繰り広げた後、スッキリしていい気分なボスの背骨をいきなりボキッ。さらにボディガードどもを怪しい中国拳法で瞬殺するとポルシェに飛び乗って逃走するが、ロケランぶちこまれて大破炎上。その様子をずっとデバガメしてたCIAが身柄を確保しようとするが、いきなり現れたちょっと萬田久子風の黒ずくめの女が鉛弾ぶちこんで始末してしまう。このちょっと萬田久子風の女こそ、巨大暗殺組織を率いる世界的犯罪者「マダムM」なのだった……!
作品の世界観を余すところなく伝える、見事なアヴァンタイトルである。
で、手下を失ったマダムMは、その後釜の育成に乗り出す。運動能力に優れた十三歳くらいの少女たちを山ほど拉致ってきて、絶海の孤島でフルメタルジャケット方式の猛特訓。短パン一丁シャツ一枚の小娘たちがイエッサーノーサーガンホーガンホーなわけですよ。監督はものすごく楽しかっただろうなあ。ほとんど犯罪。で、最終試験はお決まり通りに仲間同士の殺し合い。そして背骨の外し方からモデル歩きまでマスターした三人の「レディ・ウェポン」が誕生する。
とまあこのあたりまでは素晴らしいんだが(素晴らしいじゃん)、後半はなぜか主人公のマギーQだけがクローズアップされてCIA捜査官とのラブストーリーになってしまう。女暗殺者同士の百合っぽい友情とかシリアルキラーな三人目との確執とか自由を求めてマダムMと対決とかそーいう女同士のドロドロな愛憎の部分をメインにもってきた方がよっぽど面白かったと思うんだが、訓練シーンだけで満足しきっちゃったのかね。
まあ、チン・シウトンが歪んだ趣味をひさびさに炸裂させたなかなかの怪作。ジェームス・キャメロンとかと同じ性癖の持ち主にはそこそこオススメ。
『花よりもなほ』
http://www.kore-eda.com/hana/
藤沢周平原作の時代劇。監督は『誰も知らない』の是枝裕和。
劇場用予告篇を以前なんかで見て、ちょっと面白そうだったのだよね。
貧乏長屋が舞台なんだけど、その長屋の風景がもう長屋って言うよりはほとんど貧民窟で。しかもそこに住んでるのが木村祐一とか上島竜兵とか古田新太とか、なんとも貧乏臭い面構えの連中ばっかり。でもそれがなんかやけに楽しそうな雰囲気で。
それで主人公は岡田准一演じる仇持ちの若侍なんだけど、こいつが剣の腕がからっきしで、しゃーねえからこの貧乏長屋の連中がなんとかしてやろうという話らしい。そういう、ボンクラ連中が力合わせてなんかする話って、大好物なのです。
で実際見てみたわけなのだけど、貧乏長屋の雰囲気は期待通りステキだった。石橋蓮司や原田芳雄、遠藤憲一なんかもすごくいい味出してて。ただ、ストーリー的にはいまいち。
「敵わぬまでも恨みの一太刀、桜のように潔く散るのが武士の生き様!」と意気込んでた岡田准一が、いろんな人々との触れ合いの中で違う生き方を見つけていく。その様子を赤穂浪士の討ち入りと対比させつつ描くというコンセプト自体はけっこうよかったと思う。だけどこれがさっぱり盛り上がらない。細かいエピソードを淡々と重ねていくだけで、最初はいいんだけどどんどんダレてくる。劇的構成ってのがさっぱりなっちゃいない。
原作がどういう作りなのかは知らないけど、組み立て次第でいくらでも面白くなったはずなのに。ドラマチックに組み立てることが情緒を殺すとでも勘違いしてるんじゃないだろうか。
ほんとこういうのが人情話系の日本映画のダメなとこだと思う。
漫画ナツ50
「酔拳の王 だんげの方」さんで行われている企画「漫画ナツ100」に参加してみる。
http://d.hatena.ne.jp/dangerous1192/20060731/p1
面白いなあと思ったのは、「新潮文庫の100冊」をモデルにしてるってとこ。漫画のスタンダードナンバーみたいなものの共通認識を作ってくのって、けっこう大事なんではないかと思ってるので。
ルールは以下のとおり。
・連載が終了しているもの。
・連載中のものは20巻以上発行されている物
・現在でも比較的手に入りやすい、読みやすいもの。(古本屋とか 漫画喫茶とかで手に入る 読める)
・最低ラインは50個です。(100個選べない人用)
俺の知識だと100冊ではかなり薄くなってしまうので、50冊に絞った。俺ルールで一作家一作品に限定。正式には完結してないものも含む。手に入りやすいかどうかは微妙なものもちょっとある。「新潮文庫の100冊」のイメージなので、割と健全っぽい方向に調整してある。俺の趣味とは必ずしも一致しているわけではない。
●少年漫画
『ONE PIECE』尾田栄一郎
『うしおととら』藤田和日朗
『SLAM DUNK』井上雄彦
『ヒカルの碁』ほったゆみ/小畑健
『はじめの一歩』森川ジョージ
『め組の大吾』曽田正人
『みどりのマキバオー』つの丸
『逆境ナイン』島本和彦
『七つの海』岩泉舞
●青年・大人漫画
『BLUE』山本直樹
『ピンポン』松本大洋
『MASTERキートン』勝鹿北星/浦沢直樹
『寄生獣』岩明均
『さくらの唄』安達哲
『めぞん一刻』高橋留美子
『蒼天航路』李學仁/王欣太
『沈黙の艦隊』かわぐちかいじ
『賭博黙示録カイジ』福本伸行
『エリア88』新谷かおる
『茄子』黒田硫黄
『のら』入江紀子
『菫画報』小原慎司
『眠れる佳人』亀井高秀
『未来のゆくえ』やまむらはじめ
『演神』藤澤勇希
●どう分類したものやら
『風の谷のナウシカ』宮崎駿
『攻殻機動隊』士郎正宗
『西武新宿戦線異常なし』押井守/おおのやすゆき
『気分はもう戦争』矢作俊彦/大友克洋
『暗黒神話』諸星大二郎
『2001夜物語』星野之宣
『ワン・ゼロ』佐藤史生
『RAID ON TOKYO』小林源文
『おざなりダンジョン』こやま基夫
『ベル☆スタア強盗団』伊藤明弘
『FUJIYAMA MAMA』池田恵
『頑丈人間スパルタカス』安永航一郎
『新家族計画』卯月妙子
『ぼのぼの』いがらしみきお
●古典
『あしたのジョー』高森朝雄/ちばてつや
『男一匹ガキ大将』本宮ひろ志
『アストロ球団』遠崎史朗/中島徳博
『デビルマン』永井豪
『銀河鉄道999』松本零士
『子連れ狼』小池一夫/小島剛夕
『カムイ伝』白土三平
『ブラック・ジャック』手塚治虫
『まんが道』藤子不二雄A
『ベルサイユのばら』池田理代子
『ガラスの仮面』美内すずえ
『涼宮ハルヒの憂鬱』
俺は最近このテの学園ラブコメに対しては割と冷淡になってきてるし、原作も一巻だけ読んで「なんじゃこりゃ」と思ってそれ以降は読んでいない。にもかかわらずアニメ版は飽きずに最後まで見れてしまったので、やはり面白いのだと思う。
原作の一巻がつまらなかったのは、その中で描かれている学園ラブコメ的な世界がちっとも魅力的に感じられなくて、最後で「俺はやっぱりこの世界が好きだぜ」みたいなことを言われてもさっぱり感銘を得られなかったせいなのだが、このアニメ版の世界はけっこう楽しかったので最後のオチもそれほど違和感なく見れた。
ただ、まあ、それは選択のハードルが極めて低いからだって気もするんだけど。あんな不気味でなんだか分からない新世界に比べたら、かわいい女の子たちに囲まれた今までどおりの生活をとりあえずは選ぶよなあ。
それはそれで青春ドラマとして手堅くまとまってるんで文句をつける筋合いのことではない。でもなあ、正直言っちゃうと、もうちょっと違う物語を期待してた。ハルヒの抱える「憂鬱」に期待してた。フツーの学校生活に適応できなくて鬱屈を持て余してる女の子って萌えるじゃん。でもハルヒって本質的に不適合者じゃないんだよね。ちょっとひねくれてるだけで、気の持ちよう次第でフツーに楽しく生きていける。憂鬱とか言うほどじゃない。それがなんかね。
俺は、ドン・キホーテ的に徹底的に現実からズレた女の子の方が萌えるんだよな。そーいうのにサンチョ・パンサ的に引っ張りまわされるのって萌えね? いや現実にそんな女の子がいたら近寄りたくもないが、妄想と現実は別腹だから。
もちろん「いやこれはもともとそういう物語じゃないですから」って言われればまったくそのとおりなんですが。
分かってはいるさ。分かってはいるけどさ!