『レディ・ウェポン』

スウォーズマン』のチン・シウトン監督作品。この監督、ツィ・ハークに言わせると「女性アクションにしか興味がない」そうで、その言葉がものすごく納得できる内容になっております。ぶっちゃけ『チャーリーズ・エンジェル』に『ニキータ』と『地獄の女囚コマンドー』を足して何にも割らなかった感じのバカ映画。
物語は、高級コールガール風の女が白いポルシェでリゾートホテルにやってくるところからはじまる。彼女は部屋で待ってたマフィアのボスとオーイエーカマンカマンベイビーなシーンを繰り広げた後、スッキリしていい気分なボスの背骨をいきなりボキッ。さらにボディガードどもを怪しい中国拳法で瞬殺するとポルシェに飛び乗って逃走するが、ロケランぶちこまれて大破炎上。その様子をずっとデバガメしてたCIAが身柄を確保しようとするが、いきなり現れたちょっと萬田久子風の黒ずくめの女が鉛弾ぶちこんで始末してしまう。このちょっと萬田久子風の女こそ、巨大暗殺組織を率いる世界的犯罪者「マダムM」なのだった……!
作品の世界観を余すところなく伝える、見事なアヴァンタイトルである。
で、手下を失ったマダムMは、その後釜の育成に乗り出す。運動能力に優れた十三歳くらいの少女たちを山ほど拉致ってきて、絶海の孤島でフルメタルジャケット方式の猛特訓。短パン一丁シャツ一枚の小娘たちがイエッサーノーサーガンホーガンホーなわけですよ。監督はものすごく楽しかっただろうなあ。ほとんど犯罪。で、最終試験はお決まり通りに仲間同士の殺し合い。そして背骨の外し方からモデル歩きまでマスターした三人の「レディ・ウェポン」が誕生する。
とまあこのあたりまでは素晴らしいんだが(素晴らしいじゃん)、後半はなぜか主人公のマギーQだけがクローズアップされてCIA捜査官とのラブストーリーになってしまう。女暗殺者同士の百合っぽい友情とかシリアルキラーな三人目との確執とか自由を求めてマダムMと対決とかそーいう女同士のドロドロな愛憎の部分をメインにもってきた方がよっぽど面白かったと思うんだが、訓練シーンだけで満足しきっちゃったのかね。
まあ、チン・シウトンが歪んだ趣味をひさびさに炸裂させたなかなかの怪作。ジェームス・キャメロンとかと同じ性癖の持ち主にはそこそこオススメ。