鷹見一幸『ガンズ・ハート 硝煙の誇り』

立直一発ツモドラドラ。素晴らしい。小説を読んでこんなに気持ちよく笑えたのは何年ぶりだろう。
イラストだけ見るとまるで『キノの旅』みたいだが、それに反して物語全体に流れているのはあふれんばかりの男気。と言っても任侠モノやヤンキーモノみたいなそれではなくて、もっと古風な、言ってしまえば講談的ヒューマニズム。前半の展開なんてモロに幡随院長兵衛だしな。
ゴマスリ署長の点数稼ぎのために仲間を逮捕するように命じられた警備隊員が、バッジを署長の足元に叩きつけてこう言うわけですよ。
「ほらよ、好きにしな。あんたの下で働くくらいなら、どっかの酒場で用心棒でもやった方がいい。よっぽどうまい空気が吸えて、お天道様を胸張って見上げることができるぜ」
でそれを見てほかの隊員たちも次々とバッジを叩きつけるわけですよ。ああもう、もうもうもう! 好漢と書いてナイスガイと読む!
こういうのを真正面からやっちゃうってのは、意外とないよね。近いところを探せば唯一、初期の宮崎駿くらいか。ラピュタの冒頭とか、カリ城のラストとか、ああいう感じの気持ちよさがこの作品には目いっぱいあふれてます。
いやあ、こういうのをざっくり引き当てるんだから、俺のオタゴーストもまだまだ捨てたもんじゃないな。ライトノベル万歳。

ガンズ・ハート 硝煙の誇り (電撃文庫)

ガンズ・ハート 硝煙の誇り (電撃文庫)